カフェイン

医師からカフェイン禁止令が出されて一ヶ月が過ぎた。

この1、2年ほど以前にも増して苛々することが増えていた。具体的にはテレビの音が我慢できないほどうるさく感じ(自宅で居間にいるときはイヤーマフをしていた)、煙草の煙に「かなり」イラッとくる。相当イラッとくる、という表現でそれがどれほどのものかはまあ察していただきたい。以前からそれらは自分が嫌なものだったので、しょうがない、自分が我慢するしかないと思っていたのだが、どうやらその度合いは周りの人が理解できないレベルにあるようだった。もしかして苦手といった範疇を超えて自分のほうが異常なのか? と考え直したのが先月。10年以上ぶりに精神科を受診した。

我々は「不安」と「苛々」は別の感情だと思いがちだが、脳内で起きていることを見るとこれらは同じ反応らしい。そして「不安」には2種類あり、ひとつは「精神不安」、もうひとつは「身体化不安」。不安というものが身体に影響を及ぼす。これがたとえば頭痛や目眩、吐き気、口の渇き、発汗、冷え…と様々な症状があり、音に過敏になるというのも起きうる症状のひとつとのこと。

一番いいのは原因から離れることではあるのだが、はい今日から離れましょう、ともいかない。いろいろ話をして聞いてみると「セロトニン」と「ノルアドレナリン」という脳内物質が関係しているらしい。
「ノルアドレナリン」というのは簡単に言えば行動意欲だったり集中力という行動の原動力になるもの。これがないとなにもやる気が起こらなくなる。だがこれが多すぎると前述の「不安」を大きくする。
「セロトニン」はその「ノルアドレナリン」の働きのバランスを保つもの。感情のコントロールや質の良い睡眠に寄与する。
つまり感情がちょっと過敏であるならばセロトニンの働きに注目するのが良い、というわけである。

そこで話に出てきたのがカフェインであった。
カフェインというのはセロトニンの働きを弱めるらしい。ちなみにアルコールはセロトニンを壊すのでもっと悪いとのことだった。普段アルコールは飲まないのでそれはどうでもいいのだが、問題はカフェインである。
プリントアウトしてくれた資料のひとつ、カフェイン含有量一覧。

ここで私の普段飲んでいる飲料を列挙しよう。牛乳。コーヒー。レッドブル。コーヒー(お供にチョコレート)。リゲイン。コカコーラ。コーヒー。…牛乳以外アウトじゃねぇか!
初めて知ったのはココアやチョコレート(カカオ)にカフェインが含まれているということ。医師曰く、「今はなんにでもカフェイン入ってますからね。自販機で目を瞑ってボタンを押したらだいたいカフェイン入りが出てきます。たしかにカフェインは(摂取すると)すっきりするので欲しくなるんです」。
普段飲んでいるものが軒並みアウトという宣告があまりにショックだったので「減らす、というのではなくゼロにしたほうがいいということか」と確認したら「今はそうですね」ということだった。
俺氏の人生危うし。牛乳にもしカフェインが入っていたら間違いなく死んでた。


その日からカフェインに注目して飲むものを選んでいるのだが、なんともタイミング良く、ドトールでカフェインレスの商品がラインナップされた。今までも病院内店舗などでは提供していたようだが、扱う店舗が拡大したようだ。

ホットでは S サイズのみの提供で、紅茶のようなティーバッグで出てくる。数分待ったほうがいい。この時期アイスのほうをよく飲んでいるが、肝心の味はちゃんとコーヒーしてる。飲み比べていないので印象になるが、普通のより酸味が強い気がする。少なくともコーヒーに関しては不満感はない。カフェインを求めているのではなくコーヒーを飲みたいという人には有力な選択肢になると思う。
ただ、自宅で豆を挽いてドリップコーヒーを淹れられないというのはやはり残念である。


そして一ヶ月以上が過ぎ、実際のところどうなのかというと、まぁ悪化はしていない。というか心持ち楽になった気はする。少なくとも電子レンジの完了音(ピーピーピーというやつ)に対して「うるせぇよ」と毒づくことはなくなった(あるときこの音で罵らなくなったことに気づいて、初めて今まで電子機器の音に苛々していたことに気づいた)。相変わらずテレビの音は我慢ならないし、決してカフェインを断ったからと言ってセロトニンドバドバ、ウユニ塩湖のような心境に達するというわけにはいかないようだ。
医師からのもう一つの助言はアンガー・マネジメント。怒りの管理である。怒りをなくそうとするのではなく、その感情をうまく扱えるようにする。ずっと前に自分でもこれらの本を読んだことはあるのだが、また機を見て紹介された本を読んでみようかと思っている。ただまあ、頭にくることはどうやったって頭にくるものである。本当に私はただ静かに暮らしたいだけなのだ。

カフェインについては、やはりたまには淹れ立てのコーヒーやレッドブルを飲みたいし、もう少ししたらたまには飲もうかなとは思っている。ただこれからも基本的にはカフェインは少なく、を意識していくことになるだろう。お酒には休肝日などというものがあるが、言ってみれば休心日のようなものだ。

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