すべてはアイロン掛けのために

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この時季、麻の服を着る機会が増える。さらっとした着心地であり乾くのも早いというメリットの一方、自然乾燥のままでは皺だらけになるという特性もある。シャツなどの場合、さすがにアイロン掛けしないと着るのが躊躇われるレベルの皺具合だ。

私はアイロン掛けが結構好きである。とにかく煩雑なものを規則性に則って再構築するのが好きらしい。あと料理しているときと同じで自分の中に籠もれるのが良い。自分のペースで、自分の好きなようにことを運べる。いい時間である。
たしか矢野顕子が「そこのアイロンに告ぐ 今すぐ熱くなれ」と唄っていたと思うが、なんとなく分かる気がする。そして私はこう言うのだ、「そこの皺に告ぐ 今すぐ背を伸ばせ」と。
子どもの頃からなんとなくアイロンとアイロン掛けが好きだった。砕氷船が氷を砕きながら進んでいくみたいに皺をかき分け進んでいく。進むのも曲がるのも自由自在。それに動と静のテンポも良い。素早くいくところもあればゆっくり時間をかけるところもある。
そんな私にとってエクストリーム・アイロニング[1]という筆舌に尽くしがたい魅力にあふれたスポーツがある。私もやってみたいのだが、とりあえずは「艦これ」しながらとか瞑想しながらのアイロン掛けで愉悦に浸っている今日この頃。


我が家のアイロン台はシンプルな長方形のローテーブルタイプであり、アイロン掛けは床に座ってするものというのが子どもの頃からの常識であった。ところが年月が経ち、母上は今では床に座ってアイロン掛けするのがつらいそうで、今度アイロン台を買うなら高さ調節のできるスタンドタイプのものが欲しいと口にするようになった。アイロン台にそんなものがあるのかとカルチャーショックを受けたわけだが、調べてみると海外ではスタンドタイプのほうが主流のようであった。考えてみれば、椅子文化では自然とそうなるだろう。

今では家でアイロン掛けをするのはほとんど私なので、自分のものとして好きなアイロン台を買うことにした。安いものでは4~5千円ほどから高さ調節可能なスタンドタイプのものがあったが、使用者の評価を見てみると「(この値段でこの使い勝手は)非常に満足」という声が多い一方で、安定性に難があるという指摘もあった。店舗で実際に見てみると、安定性よりも私は折りたたみの開閉や、高さ調節などの操作性が気になった。やり方は店員氏に教わったものの、硬いというか、スムーズにできない。慣れればどうということはないのかもしれないが、初見でぱっとできないのは何か理由があるはずだった。

もう少し調べてみて目に留まったのが外国製のアイロン台[2]。オランダの brabantia(ブラバンシア)というメーカーのものがよく知られているようである。サイズはぐっと大きくなるものの、使い勝手は文句なしという声が多い。

http://www.bb-jp.net/

SWIRL というアイロン台がでかいが良さそうだったので、収納場所等勘案してから買うことにした。楽天のお店で1万8千円弱で買うことができた。
あと、長くブラバンシアのアイロン台を愛用していた人が高評価していたのは、交換用フェルトパッドとスペアカバー。アイロン台そのものが届いてから、標準ではアイロン台のクッション材はフェルトではなくスポンジであることを確認。最初からフェルトに変えたほうが快適そうだったのでフェルトパッドと、好みのカバーに変えようとエクリュのカバーも購入。買ったのはアイロン台とは別のお店だが同じく楽天で。

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サーフボードみたいである。ちなみに折りたたみ時の奥行き(厚さ)は 100mm とあるが実測では 70mm くらいだった。

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アイロン置き。心許ないようだったら服飾関係の学校などで使われているというアイロン置きを別途買おうかと思っていたが、十分使える。アイロン置きなんて初めての経験である。念のため触ってはいないが、シリコンのおかげで直接には熱が伝わらないようになっている。すげえ。

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裏側。購入前にブラバンシアのアイロン台に実際に触れることができなかったので不安だったが、操作性は極めて快適。立ち上げるときはスムーズだし(足のロックを外して台を持ち上げるだけ)、たたむときはハンドルを握って台を下げていけば良い。この動きが非常に滑らかである。また安定性も問題ない。長辺方向は当然のこと、安いアイロン台で指摘されていた短辺方向へのアイロンの移動にもまったく不安要素がない。
足のロック具合もいい塩梅で、立ち上げるときはたたんだまま床に寝かせて足をちょっと押せばロックが外れ、たたむ時は自重でロックされる。収納時に自然に開いてしまうなどといったこともない。

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購入したもの一式。上からスペアカバー、フェルトパッド、標準仕様のアイロン台。

とにかく使っていてストレスのないアイロン台である。大きさにしては軽いので持ち運びも苦ではない。たぶんたまに家人も使うことがあるかと思うが、誰にとっても使いやすいのではないかと思う。

ちなみに、これが図らずも今年の自分への誕生日プレゼントになった。長く愛用できそうな一品である。

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