梅 2017 (大倉山公園)
何年ぶりかに大倉山公園へ梅を見に行った。観梅会が2月18日から始まるので人混みを避けるためそれより前に行くのは当然のことだったのだが、天候が快晴続きで花見には向かず、結局雲が出たのはぎりぎりの17日であった。ちなみにこの日は春一番が吹き、暖かい午後であった。
写真を撮らない人には「快晴は花見には向かない」というのはよく分からないことかもしれない。「花曇り」という言葉がある。これは「桜が咲く頃の曇りがちな空模様」のことを言うのだが、私はもうひとつこの言葉には真実があると思う。「花が一番美しく映える薄く雲の流れる空模様」ということだ。
快晴だと光が強すぎて花弁の一枚一枚に濃い影が出る。明るい花弁は白飛びしやすくなり、本来しっとりとした繊細な葉や花弁の表情がぎらぎらしてしまう。まったく花見には向かない。写真に撮ろうとも思えない最悪のコンディションである。まだ雨のほうがいい(というか雨は花写真向きの天気である)。
薄い曇り空だったらどうだろう。天然のディフューザー(Diffuser、ストロボなどの光を拡散するもの)がかかった状態だ。十分明るいのに光は柔らかくなり、影は強く出ない。植物の繊細さを堪能できる。
では本格的な曇天はどうなのかというと、今度は光量不足が首をもたげ始めるので最適とは言えない。特に風が出ているとマクロな寄りかたをしているとタイミングが難しくなる。
つまりこの日は晴れ具合は良かったのだが、春一番の強風で撮影には微妙な日和であった。
「月影」という品種。緑がかった梅は好み。欲しい。
「白加賀」という品種。加賀さんに捧げる一枚という心持ちで撮った一枚。
「淡路枝垂」という品種。
枝垂れの中から見上げて。
ヒヨドリがナズナ(ぺんぺん草)の花を食べたり、梅の花の蜜を吸ったりしていた。嘴が花粉にまみれて黄色くなっている。
最初に撮影のことを書いたが、観梅会ではないとはいえそれなりに人出があり携帯電話かカメラかを問わず写真撮影を楽しんでいる人も多かった。彼らを見るにどうも2種類のタイプがいたのだ。
- 雲から太陽が顔を出すと…
どうも写真に不慣れな人「ワー キレイダワー(カシャカシャカシャ」
分かってる人「…(ファインダーをのぞいたまま動かない)」 - 太陽が雲に隠れると…
どうも写真に不慣れな人「アーン カゲッチャッタワー(そこを離れて歩き出す」
分かってる人「パシャッ(満足げに微笑む)」
真逆である。もちろん狙って撮っているなら構わないのだが、知らないのならそれはもったいない。
アドバイスできるほど知識があるわけではないが、経験則から助言するならば
- 花をきれいに撮りたいのなら、曇り空。どうしようもないほどの快晴なら手で光を遮ったり、誰かに立ってもらって陰を作るのもアリ。
- とにかく寄れ。最短撮影距離まで寄れ。引きの写真を撮るのはそれからだ。
- 花と人を一緒に撮りたいのなら全身を入れようとしない。バストアップか顔のアップでいい。
この3つだけで印象はガラッと変わるはずである。特に記念写真。どうしても全身を撮りたいなら好きなだけ撮ったって構わないが、はっきり言ってそれどうしようもなく「記念写真」ですよ奥さん。
良い写真の秘訣は機材でも撮影設定でもなく「足」が大きいと思う。それは「被写体に寄る・引く」ということ。初心者はまず「寄る」ことを実践したほうがいい。
大倉山記念館。この建物はいつ来てもかっこいい。住みたい。