食事制限下における摂取量の可視化

この秋に家人が腎臓病(慢性腎不全)であることがわかり、進行を抑えるための療法のひとつとして食事制限をすることになった。療法とは言っても腎臓病は基本的に治ることはないため、これ以上悪化させないための対症療法に過ぎないのであるが、このまま何もしなければ人工透析は避けられないので、食事を作る母上や私は毎日かなり気を張っている。一方、当の本人の父上については言いたいことが山ほどあるのだが、それに触れると300万文字くらい要するのでここでは割愛する。

食事制限の内容としては、蛋白質・カリウム・塩分の3つの摂取制限である。おおよそ健康な成人男性の 2/3 ほどに抑えると思えば良い。2/3 と聞くとそれほど難しくないように思えるが、実際にやってみると本当に大変である。この3つを抑えるだけならまだ話は簡単なのだが、そのまま減らすだけだとカロリーが足りなくなる。また特に主菜の量が減るので満足感も得られない。
蛋白質とカリウムの両方を制限するというのも曲者で、蛋白質(穀物、肉、魚)の代わりに芋類を摂ろうとするとそちらにはカリウムが豊富で避けるべき食材の筆頭に挙げられている。
カロリーを確保するために、砂糖や油を有効に使いながらやっているが、単に揚げ物などにすると胃がもたれると宣うので簡単にはいかない。
蛋白質とカリウムを3割減、カロリーは維持、スペシャルウェポン・揚げ物禁止。無理ゲーでしょコレ。


とまあ、食事制限自体もこのように非常に難易度が高いのであるが、問題はもうひとつある。
それは食事を用意する我々の負担である。特に精神的負担が大きい。1日3食の食事を毎日毎日、例外なく管理する必要がある。今食べたのがこの量だから、今日はあとどれだけ摂れるというのを常に把握しておかなければならない。特に母上の負担の大きさは想像に難くないので、いかにその負担を減らすかもこれからの生活の課題である。

そのうち、食事制限下における制限対象の栄養(成分)について、できるだけ簡略化するために考えた方法がなかなかに便利なので紹介する。一般家庭で無理なく出来、低予算で十分対応できる。

それにはホワイトボードとマグネットシートを使う。

ホワイトボードは方眼罫の入ったものだと使いやすい。マグネットシートはすでにカットされているものではなく、自分でカットできるものを。
私が購入したのは以下の商品。

アスカ Asmix VWB067 [セクションボードエス]
https://www.yodobashi.com/product/100000001003769932/
http://www.asmix.co.jp/iteminfo/vwb067/

コクヨ KOKUYO マク-300W
https://www.yodobashi.com/product/000000359109940723/ これは2つ購入
https://www.kokuyo-st.co.jp/search/1_detail.php?sid=100112223

合わせて 1500 円ほど。この商品の組み合わせが素晴らしいのは、ホワイトボード・VWB067 の方眼罫が 25mm 角であり、マグネットシート・マク-300W のサイズが 300mm x 100mm ということである。つまり無駄なくぴったり使い切れる。

父上の場合、一日の蛋白質を 40g に制限する必要がある。蛋白質・カリウム・塩分と3種類あるわけだが、この中で最優先すべきは蛋白質。蛋白質を抑えれば必然的にカリウムも減る。また野菜の類いはすべて下茹でしているのでそこでカリウムも低減している。果物は生食だとカリウムが多いため、すべて缶詰のもの。
塩分は 7g 制限であるが、煎餅など塩分の多い間食をなくしたこと、汁物を1日に一回に減らしたこと、減塩を意識した調理、そもそもの主菜(味付けした肉や干物など)の減量などによりクリアできていると判断した。一度にすべての項目を管理するのはさすがに無理なので、まずは効果の大きい蛋白質のみを可視化する。

方眼罫の1マスを蛋白質 1g とし、日々の献立で頻繁に使う食材・食品の蛋白質量に合わせてシートをカットする。例えば蛋白質 3g のものなら、マグネットシートを 75mm x 25mm にカットし、油性ペンで食品名を書いておく。なお書き直したい場合はアルコールで拭き取ることが出来る。
ご飯や味噌汁、ヨーグルトなど毎日食べるもの。家庭ごとに変わると思うが、よく買う甘味など。とにかく頻繁に登場するなというものは片っ端からシートを作っておくと良い。肝はそれぞれの家庭の食生活に合わせて、アレンジできることである。

コツは、あまりに細分化するとシートを探す手間が増えるので、「肉」と「魚」で分けるのではなくそこは一種類にまとめ、2~3枚ほど作っておくと汎用性とのバランスがとれる。また微調整に使える「蛋白質 1g」のシートを複数枚作っておく。
それ以外のたまに登場するメニュー、変則的な献立になった場合などはホワイトボードであるので、付属のホワイトボードマーカーで記入すれば良い。
目的を厳密に管理することではなく、簡略化することに置くことが大事である。可視化し、考える手間を極力カットする。これだけで負担を相当に軽減できる。

ある日の献立。
実際にマグネットを貼っていく際には、多め多めに見積もるほうが良いと思う。「小数点以下は切り上げ」くらいに割り切っている。例えば朝食の鮭は30g強あったので「蛋白質 1g」を追加して貼っている。
昼食のお汁粉の小豆は蛋白質 4g として計上。夕飯のハヤシルゥ・蛋白質 5.8g は 6g として計上している。結果的に 2g も 3g も変わってくるのであれば問題だが、このくらいの余裕は見ておいたほうが調整しやすい。
「野菜・副菜」の 1g には野菜にかけるドレッシングやマヨネーズに含まれる蛋白質も見込んでいる。

可視化することのメリットは非常に大きい。昼食が終わった段階で、残りどれくらいなのかがビジュアルとして残る。ボードの横幅を5マスにしているのもミソ。瞬時に把握するためには4マスや6マスでなく5マスにするのがおすすめ。

マグネットシートの利点はいくつもあるが、重ね貼りできるのも便利。たとえばワッフルを半分とカステラを食べた、という場合はこのようにワッフルの半分に重なるように貼ればいいだけ。


このような生活になってそろそろ3ヶ月が経とうとしているが、我ながらこのライフハックのアイディアは優れているし、超絶に助かっていると思う。スマフォアプリで管理できるという人はそれで事足りるかもしれないが、機器が苦手な母上でも無理なく毎日・毎食使えるツールとしてはこのくらいアナログなほうが良い。また私自身でさえ、数字で出されるより食卓のそばに置いてあるこのボードの視覚的情報が圧倒的に分かりやすく、総合的な使い勝手も含めひとまずこれに勝るものはないと思っている。

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